1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)認定試験 答案練習 
~2017年度試験対策・第1回~

■企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第348号
(2017.5.15)掲載
A分野:退職給付会計

 退職給付会計の概要及び簡便法による退職給付会計の会計処理に関する問題です。
退職給付会計はDCプランナー2級の試験範囲にはない項目であり計算問題も含ま
れるため、苦手意識を持つ人も少なくないと思われますが、計算自体は決して難し
くなく、それぞれの用語の定義や計算方法を理解すれば解ける問題が大半です。
 テキストの他、「退職給付に関する会計基準」「退職給付に関する会計基準の適
用指針」も参照にするとよいでしょう。

《問1》の「解答・解説」
 退職給付会計の内容に関する問題です。

(1)退職給付会計では、基本的な会計処理の枠組みとして発生主義がとられてい
   ます。これは、労働を提供したこと等の支出の原因または効果の期間帰属に
   基づいて、費用として認識するものです。
(2)退職給付見込額の期間帰属については、以下の2つの方法の選択適用が認め
   られています。ただし、一旦採用した方法は、原則として継続して適用しな
   ければなりません。
  (A)期間定額基準
     退職給付見込額について、全勤務期間で除した額を各期の発生額とする
     方法
  (B)給付算定式基準
     退職給付制度の給付算定式に従って、各勤務期間に帰属させた給付に基
     づき見積もった額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法
(3)退職給付会計の年金資産とは、特定の退職給付制度のために、その制度につ
   いて企業と従業員との契約(退職金規程等)に基づいて積み立てられた資産
   のうち、一定の要件を満たすものをいいます。 具体的には、厚生年金基金
   制度、確定給付企業年金制度において保有する資産に加え、一定の要件を満
   たす退職給付信託が該当します。
(4)数理計算上の差異、過去勤務費用は、原則として各期の発生額について、
   一定の年数で按分した額を毎期費用処理します。
   また、連結財務諸表では、数理計算上の差異、過去勤務費用の当期発生額の
   うち、費用処理されない部分(未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務
   費用)は、純資産の部に計上します

《解答例》
(1)×:(理由)現金主義ではなく発生主義がとられ、支出の原因または効果の
         期間帰属に基づいて費用として認識するため
(2)×:(理由)期間定額基準または給付算定式基準のいずれかを選択して算定
         することが認められているため
(3)×:(理由)確定給付企業年金と厚生年金基金だけでなく、一定の要件を満
         たした退職給付信託も年金資産に該当するため
(4)〇

《問2》の「解答・解説」

 簡便法による退職給付会計の会計処理に関する問題です。まず、(a)に入る語
句として、「原則法において、退職により見込まれる退職給付の総額のうち、期末
までに発生していると認められる額を割り引いて計算する項目」が何であるかを理
解しているかどうかがポイントとなります。

 原則法のもとでは、退職給付債務は退職により見込まれる退職給付の総額のうち、
期末までに発生していると認められる額を割り引いて計算しますが、簡便法ではよ
り簡便な計算方法が認められます。
 計算方法は複数あり、実態に基づいて合理的と判断される方法を選択します。
たとえば、退職一時金制度のみの場合は、退職給付に係る期末自己都合要支給額を
退職給付債務とする方法があり、企業年金制度のみの場合は、直近の年金財政計算
上の数理債務の額を退職給付債務とする方法があります。
 
 なお、個別財務諸表における各項目の計算方法は、以下のとおりです。
 退職給付引当金=簡便法により計算された退職給付債務-年金資産
 退職給付費用=期末の退職給付引当金-(期首の退職給付引当金-企業年金制度
        への掛金拠出額-退職金支払額)

《解答》 (a)ホ (b)ヌ (c)へ (d)ヲ (e)イ

《問3》の「解答・解説」

 問2に基づいて、簡便法による退職給付会計の会計処理を、具体的に計算する問
題です。
(1)退職給付引当金=簡便法により計算された退職給付債務-年金資産
   前提条件より、期末の退職給付債務=600(百万円)、期末の年金資産=520
   (百万円)、期末の退職給付引当金の額=600-520=80(百万円)
(2)退職給付費用=期末の退職給付引当金-(期首の退職給付引当金-企業年金
          制度への掛金拠出額-退職金支払額)
   期末の退職給付引当金は(1)より80(百万円)
   期首の退職給付引当金=期首の退職給付債務-期首の年金資産=450(百万
   円)-400(百万円)=50(百万円)
   前提条件より、企業年金制度への掛金拠出額=85(百万円)、
   退職金支払額=0
   従って、今期の退職給付費用=80-(50-85)=115(百万円)

《計算過程》
 (1)600百万円-520百万円=80百万円
 (2)80百万円-{(450百万円-400百万円)-85百万円}=80百万円+35百万円
    =115百万円

《解答》 (1)80(百万円) (2)115(百万円)