企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第278号(2014.6.15)
AB分野:わが国の年金制度・退職給付会計・確定拠出年金

退職一時金から確定拠出年金および中小企業退職金共済制度への移行についての問題です。移行に関する会計処理や、移行先制度の加入要件などについて確認しておきましょう。

——————————————————————

《問1》の「解答・解説」

退職給付制度間の移行に関する会計処理についての問題です。退職給付制度の終了に該当する場合、該当しない場合のそれぞれの会計処理について、整理して理解しておきましょう。各空欄のポイントは以下の通りです。
(1)退職給付制度間の移行や制度改訂に際し、退職給付債務がその減少分相当額の支払等を伴って減少する場合は、退職給付制度の終了に該当します。したがって、退職一時金の過去勤務期間分の確定拠出年金への移行は資産の移換を伴うため、退職給付制度の終了とみなされます。
(2)支払を伴う退職給付制度間の移行において、退職給付制度の終了の会計処理を認識するのは、移行日、つまり確定拠出年金の企業型年金の規約の施行日です。
(3)退職給付制度間の移行や制度改訂に際し、支払等を伴わない場合は、退職給付制度の終了には該当しません。したがって、退職一時金制度の将来勤務期間分のみを確定拠出年金の企業型年金に移行する場合は、資産の移換がないことから、退職給付制度の終了には該当しません。この場合は、変更前後の退職給付債務の差額について退職給付債務の増額又は減額の会計処理を行います。
(4)退職給付債務の増額又は減額の会計処理とは、変更前後の退職給付債務の差額を過去勤務債務として費用処理することです。
(5)変更前後の退職給付債務の差額は、過去勤務債務(費用)に該当するため、平均残存勤務期間(年数)以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理します。

《解答》(1)終了(または、一部終了) (2)施行 (3)退職給付債務 (4)過去勤務 (5)平均残存勤務

——————————————————————

《問2》の「解答・解説」

退職一時金制度から確定拠出年金の企業型年金への資産の移換に関する問題です。難易度は高くありませんが、設例を良く読み、移換対象となる資産額と資産の移行の期間を正しく算出できるかがポイントです。
設例に過去勤務期間の100%を移行するとあるので、移換対象となる資産額は、移行日前日の自己都合要支給額の5億円です。
また、資産移換の期間は、法令では、退職金規程の改訂又は廃止が行われた日(移行日)の属する年度から、当該年度の翌年度から起算して3年度以上7年度以内で行うことになっています。設例では最長年数で行うとあるので、8年間となります。したがって、実際に、毎期、分割して移換する額は、5億円÷8年=6250万円です。

《解答》
5億円(自己都合要支給額)÷8年=6250万円
6,250万円

——————————————————————

《問3》の「解答・解説」

中小企業退職金共済制度の加入要件に関する問題です。
中小企業退職金共済制度には、常用従業員数又は資本金・出資金のいずれかが、業種によって定められた範囲内であれば加入できます。
X社は、製造業なので、常用従業員数300人以下又は資本金・出資金3億円以下のいずれかを満たしていれば加入できますが、[X社資料]によると、常用従業員数325人、資本金(出資金)3.5億円と、どちらも上回っているため、加入要件を満たしていません。
どちらの要件も満たしていないという点がポイントです。

《解答》
X社は、製造業で、製造業の中小企業退職金共済制度への加入要件は常時使用する従業員が300人以下または資本金・出資金が3億円以下である。X社は条件にあてはまらないので、加入できない。