1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)認定試験 答案練習
~2016年度試験対策・第5回~
■企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン第332号(2016.9.15)掲載
C分野:運用商品の知識とリターンとリスクの計算
今回からC分野の問題です。運用商品の知識、収益分シナリオとその生起確率に基づいてファンドのリスク・リターンを求める問題、シャープ・レシオに基づいてポートフォリオを構築し、そのリターンを求める問題です。
《問1》の「解答・解説」
不動産投資信託、利率保証型積立生命保険、公社債投資信託に関する知識を問う問題です。不動産投資信託はクローズド・エンド型投資法人で、多くは年2回の決算を行います。配当可能利益の90%超を配当として投資者に分配することといった一定の条件を満たせば、実質的に法人税がかかりません。法人税法上は投資法人の稼得利益を課税対象としますが、投資家に払う利益配当の損金算入を認めることで、実質的には法人税が課税されないということです(ペイ・スルー課税)。利益の90%を配当として投資者に支払うことを義務付けているわけではありません。
利率保証型積立生命保険について。(2)記述のとおり、生命保険契約者保護機構の支払対象である元本確保型商品であり、保証利率適用期間中に他の運用商品へスイッチングを行う場合、その時点の市場金利や残存期間によっては、返戻金額が払込保険料を下回る場合があります(市場価格調整、解約控除)。
適用される利率は、国債の流通利回り等を基準に、運用環境に応じて一定の保証利率適用期間ごとに見直されます。勘違いしやすいのですが、保証期間内に見直しを行うものではありません。一度適用された保証利率は、保証期間満了まで変更されないことに注意してください。
公社債投資信託は、(4)前半に記述のとおり、運用対象がコマーシャルペーパーなどに限定されており、株式は組み入れることができない証券投資信託です。ノーロード型は公社債投資信託に限って設定されているのではなく、株式投資信託でも採用されています。
《解答例》
(1) × :【理由】不動産投資信託は、配当可能利益の90%超を配当として投資者
に支払えば法人税が免除されるが、法律上で義務付けられてい
るわけではない。
(2) ○
(3) × :【理由】一度適用された保証利率は、保証期間満了まで変更されない。
(4) × :【理由】購入時手数料を徴収しないノーロード型は、株式投資信託でも
採用されている。
《問2》の「解答・解説」
シナリオに基づいた予想収益率が示されている場合の、運用商品における予想収益率を求める問題です。下記の公式を使って求めます。
実は、同試験の基礎編《問31》の問題の選択肢に関連した項目がありました。このようなパターンは、よくあります。仮に午前の試験で解答に自信が持てない論点が出たら、そのままにせずに昼休みに再チェックをしておきましょう。午後の試験で形を変えて出てくるかもしれません。
運用商品の予想収益率=[(各シナリオの生起確率)×各シナリオの予想収益率)]の総和
上記の場合における運用商品の標準偏差(リスク)は下記の公式で求めます。
運用商品の標準偏差(リスク)= [(各シナリオの生起確率)
×{(運用商品の予想収益率 - 各シナリオの予想収益率)の二乗}]
の総和を平方根したもの
(1)シナリオ1の予想収益率が未知なのでこれをXとし、公式にあてはめてみます。
商品(d)の予想収益率=(X×0.3)+(3.0%×0.4)+(-1.5%×0.3)=4.2%
∴X=11.5%
(2)商品(d)の予想収益率11.5%を用いて、公式に当てはめながら商品(d)の標準偏差
(リスク)を求めます。
0.3×(11.5-4.2)×(11.5-4.2)
+0.4×(3-4.2)×(3-4.2)
+0.3×(-1.5-4.2)×(-1.5-4.2)
=26.31
26.31 の平方根=5.12… → 5.1%
《解答》 (1) 予想収益率 11.5% (2) 標準偏差(リスク) 5.1 %
《問3》の「解答・解説」
運用商品のシャープ・レシオの高い順から所与の割合でポートフォリオを構築し、その期待リターンを求める問題です。シャープ・レシオの計算過程不要とありますが、解答は要求されていますので問題用紙に下書きするなりして計算することにはなります。
(1)商品(a)~(d)のシャープ・レシオは下記のとおりになります。
商品(a) (4.9-0.1)÷15.6=0.307… → 0.31
商品(b) (1.1-0.1)÷ 1.8=0.555… → 0.56
商品(c) (0.2-0.1)÷ 0.3=0.333… → 0.33
商品(d) (4.2-0.1)÷ 5.1=0.803… → 0.80
(2)シャープ・レシオの結果から、
商品(d): 40%
商品(b): 30%
商品(c): 20%
商品(a): 10%
の割合で運用するポートフォリオを作ることになります。
したがって、ポートフォリオの期待リターンは下記のとおりになります。
(4.2%×0.4)+(1.1%×0.3)+(0.2%×0.2)+(4.9%×0.1)=2.54 → 2.5%
《解答》
(1)シャープ・レシオ 商品(a)0.31
商品(b)0.56
商品(c)0.33
商品(d)0.80
(2)ポートフォリオの期待リターン 2.5 %