簿記を学んで無敵の人材に

独学で挫折しないテキストづくり

-公認会計士を目指していたとお聞きしました。

従兄弟が会計士試験に合格した影響もあって、大学は商学部に入り、会計士を目指して勉強を始めました。「日商簿記1級に合格しないと公認会計士試験に受からない」と思い、簿記の勉強を始めたのもこの時です。経済的に厳しかったので、授業の後はアルバイトをしなければならず、会計士の勉強はもっぱら独学でした。その頃は資格試験のテキストは少なく、書店に専用のコーナーもなかった時代で、私は専門書で勉強しました。独学ですから、わからないところがあっても自分で調べ、考えるしかなくて、大変な思いをしました。でも、その分、理解できた時は本当に嬉しかったですし、1級に合格したことで自信が持てました。

大学を卒業し、会計士を目指すかたわら、簿記の講師をしたり、教材づくりを始めました。その後、出版事業を立ち上げ、本格的に資格試験のテキスト作成に取り組んだのです。その頃から今に至るまで、常に心がけているのは、私自身が苦労した経験を踏まえて、「独学で勉強する人が挫折しないような、わかりやすいテキストをつくること」です。講座であれば、講師、カリキュラム、テキストを一体にして提供できますが、独学者にとっては、テキストだけが頼りです。いま、私たちのテキストが市場で評価をいただいているのも、独学者のための書籍づくりに力を注いでいることが大きいと考えています。

また、本の色やデザインにもこだわっています。私がテキストづくりを始めた頃は、資格試験関係の本はどれも地味な色をしていて、書店の奥のほうに置かれていました。受験に向けてよほど強い意志を持っていないと、そこまで足が向かない、という感じでした。でも、資格の勉強をする人は、「新しいチャレンジをしよう!」という前向きな気持ちを持った方たちです。そこで、その気持ちに応えるような本を作ろうと思いました。表紙も中身も、色やデザインにこだわり派手なものにしました。今、書店の目立つ場所に資格関係のコーナーが置かれるようになり、そこに並ぶ書籍のデザインが様変わりしたのを見ると、地味なイメージを変える先駆けになったのかなと思います。

増収の鍵は簿記・会計の知識

-簿記を学んだ知識を経営に活かしているとお聞きしました。

出版業界を取り巻く環境は大変厳しく、売上高は年々縮小し、経費削減によって利益を出そうとする傾向が強く見られます。そうした中で、当事業部がこの5年間増収を続けられたのは、部下に恵まれたことはもとより、簿記や管理会計(※)で学んだ知識を活かして、常に会計の指標をチェックしながら経営していることが大きいと思います。
(※)管理会計は、ある企業に関する取引データの情報を、経営者はじめ企業幹部に提供するための会計システム。これに対し、こうした情報を、株主、金融機関など企業外部の利害関係者に提供するための会計システムを財務会計と呼ぶ。

ビジネスマンには、数字に強い人とそうでない人がいて、強い人は、その分、会社に利益をもたらし貢献できる可能性が高くなります。これは財務や経理部門の人だけの話ではありません。技術や営業、企画など他の分野に秀でている人が簿記や会計を学べば、数字にも強くなり、まさに「無敵」の人材になれます。

簿記は仕事をするうえでの礎

-簿記を学んでいる方にメッセージをお願いします。

私にとって簿記は、仕事をする上での礎になる知識であり、「強み」として、心の支えになっています。簿記がわかると物事の本質的なことが見えてきます。日商簿記でいうと、3級、2級、1級と進むたびに、違う世界が開けてくるのです。大変だとは思いますが、できれば1級まで挑戦していただきたいですね。
私自身、出版業界全体を元気にしたいという気持ちを強く持っていて、そのために、今後も簿記で学んだ知識を活かしていきたいと思います。

Profile


福原 克泰Fukuhara Katsuyasu
1955年、宮城県生まれ。1978年、明治大学商学部卒。1979年、大栄教育システム株式会社入社。1986年、同社取締役出版事業部長(出版事業を興す)。1995年、同社専務取締役事業統括担当。2011年、TAC株式会社入社、執行役員出版事業部長。2015年、同社取締役。