平成16年度の全体講評と今後の学習の指針

                                          平成17年5月

 1985年(昭和60年)に発足した「日本語文書処理技能(日商文書技能)

検定試験」は、今年度(2005年度)から21年目に入りました。今年成人式を

迎えられた皆さんと同じ年月を経たことになります。つまり、この検定試験も

「大人(おとな)」(注)になったというわけです。

 情報機器を使った文書処理の分野は、この20年ほどの間にハードウェアの

高機能化やソフトウェアの充実などによって、作成・処理される文書の種類や

形式、記述される文章の内容も大きく変化しました。発足当時、文書作成専用

機といわれた日本語ワードプロセッサと現在活用されているパソコンとでは、

その機能にきわめて大きな差があることは述べるまでもありません。当然のこ

とですが、この検定試験で出題されるテーマや内容も、(文書処理の基本的要素

以外は)その時、時の実情にあわせて変化しています。したがって、この検定

の受験にあたっては、現在のビジネスにおける文書処理の状況を十分に把握し

ておくことが大切です。

 最新の情報機器を使って実施されるこの種の試験は、機器の種類や機器の性

能(機能)などによって処理過程や解答に影響が出ることが懸念されます。し

かし、日商文書処理技能検定ではこれに十分な配慮がなされていて、公平に、

そして安全に実施、運営されていますから、ご心配は無用です。

さて今回も、昨年度に実施された日商文書技能検定試験の解答状況を概括し

ながら、級ごとに、新しい年度の受験対策を考えてみることにします。


(注)
「大人」とか「昨日(きのう)」、「紅葉(もみじ)」などのように、
 二字以上の
漢字で書いたことばに、特定の日本語をあてて読むことを
「漢字訓」といいます。

1.3級

 日本語でビジネス文書を作成したり、ビジネス文章を記述したりするための

基本的な技能と知識を問うのが3級です。すなわち、企業社会で活躍するため

には絶対に備えなければならない必須のレベルというわけです。

 特に近年は言葉の乱れが目立ち、適切なコミュニケーションがとれなくなり

つつあるなどといわれます。コミュニケーションのギャップ(相違)、つまり、

伝えたい内容をうまく表現できない、また、相手の意図や意志を正確に理解で

きないという「表現力と理解力の不足」は、ビジネス実務にとっては致命的と

もいえる欠陥です。

この検定試験の特徴の一つは、試験4科目を同時進行で学習することによっ

て、「読み取る力・聞き取る力(読解力・聴解力)」と「書き表す力・表現する

力(表記・表現力)」を高められることです。ぜひ実行してみてください。

 近年の「ビジネス文書科目」の出題は、定型文章形式に図形処理が加わる傾

向が顕著です。これは、ビジネスの現場で図表を多用したりプレゼンテーショ

ン・ソフトを活用したりする機会が増えたことの表れのようです。文章に加え

て、より具体的な表記・表現のための工夫がなされるようになったわけです。

したがって、これまでのように文章記述だけでなく、本文と図表との関連にも

留意した受験対策が必要です。

事前の学習にも、試験時にもいえることですが、「この問題は解答者に何を求

めているのか」、つまり「出題の意図は何か」「それに答えるためには、どの機

能をどのように活用すればいいのか」といったように、目的(解答)にたどり

着くまでの手順を考え、これを探りながら作業と操作を進めることが重要です。

指示された問いにただ答えるだけでは、目的に行き着くことができないかもし

れません。

 「日本語科目」の解答で目立つ傾向は、慣用句や四字漢語(四字熟語)の誤

答が多いことです。ビジネス現場でよく使われる語句ばかりの課題ですから、

いわば常識レベル。しっかり対策してほしいと思います。他方、文章判読課題

は過去に比べると、しっかり解答できるようになったと思われます。先述した

読解力が徐々に高まってきていると考えられます。これをさらに高められれば、

周りの人々から高い評価を受けることが確実です。

 近年の「常識科目」は、従来の文書処理に新しい知識や常識が加わるように

なってきました。つまり、インターネットやeメール、プレゼン・ソフトの活

用といった新しい技術要素です。過去の問題に加えてこれら新分野の基本的要

素を勉強しておくことが必要でしょう。

 本稿では繰り返して述べていますが、「入力科目」がクリアできずに不合格に

なる受験者が年々増加しています。他の3科目で合格点を獲得していながら、

「350(342)字/10分間」(3級)が入力できないだけで合格にならな

いのですから、実にもったいないことです。

これをクリアするためには「タッチタイピング」の習得が不可欠です。タッ

チタイピングの練習には、無料配付されている「キータッチ2000テスト」と「ビ

ジネスキーボード認定試験」のデモンストレーション・ソフト(期間限定)が

最適です。この(日本商工会議所)ホームページから簡単にダウンロードでき

ますから、ぜひお試しください。能力アップは確実ですし、この練習で上記2

種の認定試験を受験することも可能です。

2.2級

 17年度「ビジネス文書科目」の課題を勝手に予想すれば、その一つにプレ

ゼン・ソフトの利活用技能があげられます。一般に、プレゼン・ソフトは多人

数を前に提案したり解説したりする際に使われ、いってみれば、部分的に強調

したり誇張したりするような局面で使われることが多いソフトです。例えば、

マイクロソフト社のパワーポイントはその名称が示すとおり、一定の文書領域や

文字列などを強調するためのソフトですから、このソフトを使いこなすために

は、作成する文書の趣旨や内容を十分に把握してからでなければ活用できませ

ん。したがって、試験で求められる課題や内容には、強調すべき個所の摘出や

その強調法、修飾法などが考えられます。しかし、だからといって他のソフト

(日本語や表計算)では効果が弱くなるということは考えられませんから、ソ

フトウェアの機能にこだわるのではなく、ビジネス文書の作成やビジネス文章

の記述において、強調したい個所や配慮してほしい個所を見分ける能力とこれ

を的確に表現する能力を高めることが大切です。

 「日本語科目」は3級と同様で、慣用句、四字漢語のミスが、相変わらず目

立ちます。ここはミスというより無知のレベルですから、中学・高校時代の国

語の教科書や参考書などを引っ張り出して勉強のし直しが必要かもしれません。

 ただし、2級における筆記2科目の成績は悪くなく、3級受験のときの学習

法や先輩方の勉強法に、上述した内容を加えて強化すれば科目のクリアは十分

に期待できます。

 「常識科目」の内容と「入力科目」の実状は、3級で述べたこととまったく

同じです。

3.1級

 1級を受験する皆さんにとって最も気がかりなのは、何といっても「ビジネ

ス文書科目」でしょう。1級はどのような文書が出題されるのかまったくわか

りませんし、その内容も皆目検討がつきません。逆説的にいえば、だからこそ

1級といえるのかもしれませんが・・・。

 昨年度は、稟議書の様式(フォーマット)の作成と、それに盛り込む文章内

容の整理、一昨年は「高齢化白書」をもとにした提案書の記述でした。さらに

またその前の年度は、苦情書に対する回答文書の作成でした。

 このようにみてきますと、1級「ビジネス文書科目」で設定されるテーマは、

ただ今のビジネスで多用されている文書やその様式が基本になっていると推察

できます。したがって、発表される「事前入力データ」と、ビジネス現場で比

較的多用されている文書領域とを突き合わせれば、ある程度の問題予想も可能

になるように思われます。「事前入力データ」を前にした「あぁでもない、こぅ

でもない」という小田原評定ではなく、ビジネスの最前線で用いられている文

書のなかから課題を見つけるという作戦が、合格に近づく道のように思うので

すが、さて、どうなりますことやら・・・。

 いずれの級も、受験日までの十分な計画によって準備できれば、合格は確実

に近づきます。ただし、この準備には全力を傾けること。長い期間ではないの

ですから、手抜きはダメです。

受験される皆さん全員の合格を期待します。どうか、全力でがんばってくだ

さい。