平成15年度の全体講評と今後の学習の指針

(平成16年4月)

 昨年度1年間に実施された日本語文書処理技能(略称:日商文書技能)検定試験の簡単な講評と、今年度の受験対策を考えてみます。これから受験しようと決意している皆さん、指導を担当される皆さんは、どうぞ参考にしてください。

 なお、商工会議所の検定試験は、今年度から受験者の本人確認を「厳格に行う」ことになりました。試験当日は、本人であることが分かる「身分証明書」を忘れずに持参するようにしてください。身分を証明するものがない場合は、受験される商工会議所か試験会場にご相談ください。ただし、小学生以下の方は不要です。

(1)日本語科目(全級)

 近ごろは、私たちが日ごろ遣っている言語、すなわち「日本語」の表記や表現、理解の仕方(読解や聴解)に大きな乱れがあり、伝えたいことと聴きたいことがうまくかみ合わないという現象が方々で起こっているといわれます。とりわけ、パソコンソフトを使った文書作成やeメールによる連絡、電話での会話といった情報のやり取り(コミュニケーション)では、誤った言葉や用語、品性のない表現などが遣われることによって双方に大きな齟齬(そご:くいちがい)を発生させたり、トラブルのもとになったりしています。

 言語は、自分の意志や情報を伝えるための手段ですから、不正確やあいまいな言葉では正しい発信や受信ができません。ビジネスの現場などでは、たった一字、一言の誤用で大切な取引に失敗したり、信頼を失ったりするという話をよく耳にします。いかに正しい日本語の遣い方が大切であるかを物語っています。このためかどうか、日本語の遣い方や活用に関する書籍が大量に発行されていて、「日本語ブーム」ともいえるほどの高い関心を集めているようです。

 この検定試験の「日本語科目」はビジネス社会で活躍するための、あるいは信頼される社会生活を送るうえでの基本的な日本語活用を習得していただくためにあるもので、いわゆる「国語」の試験ではありません。したがって、出題される内容は「やさしい文章だけれども、理解しておかなければならない『表記』と『読解』の課題」が問われることになります。ビジネスを遂行するうえで、あるいは社会生活を送るうえで、もたなければならない基本的な内容が出題されると考えればいいでしょう。

 出題される具体的な内容は、昨年度の本稿で詳しく述べました。これは16年度も変わることはないでしょう。このWebページの15年度の項をご参照ください。

 なお、日本商工会議所が監修した「日本語ゼミナール」(書店やインターネットのサイトで販売中)は、上述した内容が詳しく解説が示されていますから、ぜひ、参考にしてください。

(2)常識科目(全級)

 コンピュータシステムをはじめ、パソコンやインターネット、eメールは、もはやビジネスだけでなく個人や家庭生活にとって、なくてはならないツール(道具)になりました。当然、ビジネス文書を作成したりデータを整理したり、あるいはまた、必要な情報を検索したり集めたりする作業を行うためには、これらのツールを効率的に操作するための知識がなければ使いこなすことはできません。そのための基礎知識を問う科目が「常識科目」です。しかし問われる課題は基礎的な知識ばかりですから、ここで出題される程度の知識がなければ、ビジネスでの活用は不可能であるといっても過言ではないでしょう。

 もう一つの要点は、ビジネス文書を作成したり扱ったりするときに必要とされる知識です。基礎的な文章表記(頭語と結語の関係、季節の言葉、接頭語など)、用紙のサイズ、敬称のつけ方、ビジネス用語といったいわばビジネスの基礎知識は、企業人がもたなければならない必須の知識です。この領域は、前述した「日本語ゼミナール」を使った学習が大いに役立ちます。

 Eメールなどの通信に関する知識も、最近のビジネスでは強く求められるようになりました。ただし、15年度から商工会議所で「電子メール活用能力検定試験」が発足しましたから、本文書技能検定でeメールに関する詳細な知識を問うことはないと思われます。基礎的な通信の知識だけをおさえておいてください。

 ここ数年、筆記の「日本語科目」と「常識科目」は、1〜3級の両科目ともに平均点が70点台の後半で推移しています。仕事に活かせる知識が充実してきた証明といえるでしょう。今後もこの方向で学習することをお勧めします。

(3)入力科目(全級)

 前回も述べましたが、最近は「入力科目」1科目だけの失敗で不合格になってしまう受験者が目立ちます。せっかく他の3科目をクリアしながら、実に残念なことといわざるをえません。繰り返し述べているように、入力操作を上達させるためにはタッチタイピングを「毎日の練習すること」しかありません。自信のない人は、1日に30分ていどでも、毎日欠かさずに練習するようにしてください。必ず効果がありますから。

 また、指導者の皆さんの中に、入力練習を重視しない方を少なからず見受けます。「キータッチ2000」テストや「ビジネスキーボード」認定試験を活用したり、新聞や雑誌のコラムなどを利用したりして、正確で速い入力操作をご指導ください。2文字、3文字の不足で不合格になるのは、いかにも残念で、受験者には気の毒なことといわざるをえません。あと一息という受験希望者に「キータッチ2000」などの試験はきわめて有効です。まだ試していない指導者の皆さんは、ぜひ一度お試しください。

(4)ビジネス文書科目

2級)
 16年度から、この科目の試験時間が10分間延長され40分間になりました(従来は30分間)。延長になった10分間は、文章記述に関する課題が加えられるものと考えられます。箇条書きや体言止め、表記の統一(文末など)、文章の抜粋と要約といった分野が予想されます。落ち着いて考えれば十分に答えられる課題のはずですから、問題文や指示文をよく読み、出題を意図をしっかり汲み取れれば容易に解答できるはずです。昨年は、ここでつまずいた受験者を多く見受けました。問題文を十分に読み込むことが大切です。時間はたっぷりあるのですから、慌てずに落ち着いて・・・。
 技巧や操作に関しては、公表された「2級・事前入力データ」をみると、従来と同じようにレイアウトや表組み、データの整理、あるいは図の作成と応用といった課題が考えられます。当然、ここでも指示を十分に理解して解答することが必要です。指示された手順を忠実に実行するようにしてください。
 なお、ネット上などにある「予想問題」は、あくまでも予想です。予想は外れる可能性の方が高いと理解し、外れた場合にはどうすればいいか、そのときとるべき行動を十分に対策しておいてください。
3級)
 3級は各地の商工会議所が日程を決めて実施していますから、試験問題の種類が多くあります。しかし、試験で求められる技能(文書作成知識と操作技術)は基本的に同じです。
 出題の傾向は、定型的なビジネス文書、文章形式が踏襲(それまでの方向をうけつぐこと)されると思われますから、受験の対策のための学習は過去の問題(ここ2年ていど)が有効と思われます。例えば、社外文書形式で一般的な主文、記書き、作表といった内容です。これは、ビジネスではきわめて大切な文書作成技術で、誰にでも作成でき誰が読んでも間違えないという形式です。検定試験だけでなく、これを習得することは企業人の第一歩でもあるのです。
 最近の解答傾向は、作表技能がやや劣るようにみられます。表の作成とこの加工の練習、表内データの整理などに力を入れて練習しておくことが大切でしょう。

 いずれの級に挑戦するにしても万全な準備で臨めば、それだけ合格に近づけることになります。また、万が一に不合格になっても後悔は小さいはずです。一つのことに挑戦すると決めたら、全力を尽くすこと。これこそが合格への近道なのです。受験されたすべての皆さんが合格されることを、心から期待しています。