平成14年度後期の講評と今後の学習の指針(第18回1級、第30回2級)


(平成14年12月24日)
総 評
 ここ数年、日商文書技能検定1、2級の試験結果には、三つの大きな傾向がみられます。その一つは、問題の意図や指示の意味をよく理解しないまま解答して、不合格になる受験者が増えていること。二つ目は、日本語科目の正答率が低下していること。これは一つ目の傾向を裏付けるものでもあります。三つ目は、入力科目で不合格になる受験者が増加していることです。

 以下に、これらの対応策を考えてみます。

(1)  ビジネス文書科目を解答するためには、まず、問題文や指示文を確実に読み取り、(1) 出題の意図はどこにあるか。(2) そのためにはどの機能を使えばいいか。すなわち、この問題で要求されている「技能」は何であるのかをじっくり考え、自分なりの結論を出すこと。趣旨(そのことをするねらい)の確認です。次に、(3) 選択した機能を使って完成させるまでの手順(計画・段取り)を練り、仮決定します。その後は、(4) 仮決定した手順どおりに解答作業を進めます。しかし、問題の意図を勘違いしたり、機能を間違えたりすることも考えられますから、このために、(5) 素早く計画変更できる余裕も念頭においておきます。また、検定試験は時間との戦いでもありますから、(6) 全体を見通した時間管理が重要です。例えば、自分にとって苦手な課題があった場合には、とりあえず後回しにしておいて、得意な課題から処理するといった次善の対策も必要でしょう。一つの課題にこだわった結果、他の課題が解答できなかったという例も少なくありません。

 このようなプロセス(例)を省いた結果に、大きな期待はもてません。問題が配布されると、すぐにパソコンの操作を行なう受験者をよく見かけますが、これでは不合格になるために受験しているようなもの。1、2級は主として、問題文や指示文から読み取ってほしい事柄、記述してほしい内容とを評価、判定します。単なる操作能力の検定ではないことを確認してください。
(2)  日本語科目は、「文章判読」と「文章表記」、「誤り表記の訂正」の三つの課題に大別されています。

 「文章判読」は与えられた『物語』(問題文)から、その文意や言葉の意味などを選択したり書き出したりするもの。落ち着いて取り組みさえすれば、正答の選択は十分に可能です。ただし、ここでも問題文と指示文を熟読し、文意を把握しなければならないことは述べるまでもありません。

 「文章表記」は同音意義語や同訓異字の選択、四字漢語の穴埋め、慣用語の選択など。「判読」とは異なり、知識を蓄えていないと苦しい選択になるはずです。日ごろから、ビジネスで多用される日本語には関心をもち、周りにある書籍や資料、新聞などを常に読むといった習慣を身につければ、これらの知識は確実に増やせます。つまり、「表記」の課題は、日常の努力があれば大きな成果をえることができるのです。もちろん、この努力はビジネスの現場でも多いに役立つ知識になるなずです。日本語表記は、一朝一夕で習得できるものではないことを理解すべきでしょう。

 「訂正」の課題は、あくまでも「誤り表記」を正すもので、漢語を開いたり(ひらがなにする)、ひらがなを漢語にしたりするものではありません。確実な誤りだけを訂正するようにしてください。
(3)  入力科目は、平成12年度から出題文字数が減らされました。当然、受験する皆さんは、これで入力科目は易しくなるだろうと考えたかもしれません。しかし現実は逆で、この科目で不合格になる受験者が確実に増えています。なぜか。多分、油断と練習不足のせいでしょう。文字数が減ったといっても、同時に許される誤字も減っているのですから、正確で迅速な入力操作に大きな変化はないのです。誤字、脱字、余字、あるいは変換ミスが合計で8文字しか許されない厳しい正答率であることを、再認識していただきたいと思います。

 なお、本年10月より新しいビジネスキーボード検定試験が始まりましたので、速くて正確なタッチタイピング技能の上達には、こちらのご活用もご検討ください。

 今回の1級の合格率は12.9%、また2級は約30%で、それぞれ前回を上回りました。

ビジネス文書科目1級(第18回)

 今年度は「詫び状」(回答書)の作成、すなわち、「苦情の申し立て」(クレーム)に対する「回答文」の記述と、それに添付するフローチャートの作成が出題されました。

 昨今の産業界ではビジネストラブルが多く発生していて、これを解決するために様々な取り組みが積極的に行なわれています。このような状況のなかで求められる苦情の処理は、相手に納得してもらえる対策と満足してもらえる内容が示されなければなりません。そのためには、事実を確認し、誤りがあれば詫び、事後の対策をはっきりと説明する努力が不可欠です。もちろん、感情的であったり冷静さを失ったりしたりしていては、クレームの処理はできません。

 問題文には、これら苦情対策の重要性と、苦情に取り組む考え方を述べたうえで、よくあるビジネスシーンを想定した課題が出されました。経験の有無が影響したためか、企業人とそれ以外の皆さんとでは結果に若干の差があったように思われます。

 「回答書」に盛り込むべき内容は、詳細に述べてありました。しかし、これを「回答文」として完成させるためには、ビジネスに適した表現に改めなければなりません。つまり、ただ「ゴメンナサイ」と詫びればいいというのではなく、当社の主張や両社で対策すべき内容にも言及し、二度と同じトラブルが起きないよう冷静に分析し、その結果を文章にすることが求められたわけです。

 お詫びにはそれに適した言葉遣いを、また、当社の立場を説明するには相手から信頼される表現を用いるというように、引き続き良好な関係を維持できるように努めることは苦情処理の大原則だからです。これらは、私たちの日常生活にも十分に共通する原則で、自分の立場だけを主張したり、ひたすら詫びたりという態度では、良質なコミュニケーションを築くことは難しいでしょう。一部の答案には相手を非難するような内容も見受けられましたが、これでは信頼を得るどころか、反感を買うことにもなってしまいます。ビジネスにおける言葉の遣い方と用語の選択は、きわめて重要なビジネス行動の一つなのです。

 チャート(図)の作成は事前入力データに示してあったためか、おおむね指示どおりにできていました。ここで最も目立った過ちは、業務と業務を結ぶ線と矢印、再び戻らなければならない業務までの線と矢印の欠落です。「業務の流れ」が途切れていたり、最後までつながっていなかったりすれば、つまり流れが完結していなければ、その業務はストップしてしまいます。

 一読して理解できる表示でなければフローチャートとはいえません。チャート、すなわち図で表示するビジネス文書の意味を理解しないまま作成されたフローチャートは、読む人を混乱させるだけ。業務の流れを表すことが目的のフローチャートには、個々の図形作成よりも流れの正確さが求められるのです。


ビジネス文書2級(第30回)

 前期(第29回)はきわめて低い合格率となって、多くの受験者を落胆させたようです。しかし、前回の本Webページで、この主な原因が「箇条書き作成」と「図形処理」、「表の加工」の三つであったと解説したところ、指導者や受験者の皆さんから同感だとの声を多数いただきました。電子媒体を多用し、簡略化の傾向が強いビジネス社会であっても、伝えたい事柄を容易に記すことができる「箇条書き」は、なくてはならない文章表現法です。企業人には必須の技能であることを再確認しておく必要があるといえましょう。

 他方、電子媒体になって、図形を用いて分かりやすく説明するテクニックも、企業人には必須のものになりました。ソフトウェア機能の向上とともに、これを活用して文書作成を効率的に行なえる能力は、必要不可欠なビジネス技能です。

 今回は、主に「表の加工」と「図形処理・加工」を主題とするプレゼンテーション資料(提案書)の作成が出題されました。加えて、A4用紙横使いで2段組の体裁(レイアウト)にするという、これまでの傾向とはやや異なる指示もありました。

 聞くところによれば、事前入力データにはおおよその内容が記されていましたから、多くの受験者が問題の予想に力を入れたようです。しかし、いくらやっても当たらないのも検定試験。大はずれで涙を飲んだ受験者は少なくありません。何度も述べているように、予想は外れる可能性の方が高いと理解し、外れた場合にはどうすればいいか、そのときとるべき行動を十分に対策しておいてください。

 2級の問題は、指示文の文字量が他の級に比べて多く、前述した文章の判読力が欠かせません。文字量が多いということは、詳しい指示で、分かりやすく表現してあるということでもあります。問1、2…、指示1、2…というように、与えられた問いや指示どおりの順序で、素直に処理することが大切です。過去の経過でも明らかなように、2級では落とし穴やヒネリが多く出されることはありません。

 今回の問題は、A4サイズ用紙3ページにわたって出されました。わずかですが、3ページ目に気づかなかったという受験者もいました。よく読まなかった証拠です。

 指示の具体的な内容をみてみます。表を加工する指示は、不要項目の削除と強調(網掛け)。図形処理は、表のデータに合う図形の数を並べるもの。そして、事前データの立体図形(3D)をもとにした解説文の追加。文章の処理は、表内の文字やデータから語句やデータを類推して穴埋めをし、文を完成させる、などでした。見出しの配置や項目の番号づけ、文字修飾といった書式の知識は、従来からある基礎的な課題です。

 これで分かるとおり、ここで使うべき各機能は「たいへんに難しい」というようなレベルではありません。つまり、日商文書技能検定試験の問題、とりわけ2級は、問いや指示をよく理解して、ビジネスで十分に通用する文書を作成することが主な課題です。日ごろから多くのビジネス文書に接し、文書の体裁、表や図、図形などによる表現方法を習得することが、有効な受験対策になるでしょう。


3級、ならびに各級筆記科目(日本語、常識)の講評は、14年度が終了した時点で行なう予定です。