出題の意図<3級>


[第1問]
は、現金過不足にかかわる仕訳問題です。未記帳の取引は従業員に対する立替金(従業員立替金)に関係する取引であること、また決算にあたっての仕訳であるため、原因不明の不足額については雑損として処理される点に注意してください。
は、仕入代金の一部の支払のために、為替手形を振り出している点がポイントとなります。売掛金のある得意先を名宛人とする為替手形を振り出しているので、貸方支払手形ではなく、貸方売掛金となる点に注意してください。
は、前期に貸倒れとして処理した売掛金が回収されたときは、償却債権取立益という収益の発生として記帳します。貸倒引当金は取引の仕訳にまったく関係しない点に注意してください。
は、従業員に対する給料の支払取引にかかわる仕訳問題です。給料から天引きされる所得税の源泉徴収額は、納付すべき所得税の預り金(所得税預り金)として記帳します。また、費用としての給料の金額は、所得税の源泉徴収額などを差し引く前の金額であり、従業員の手取金の金額と等しいわけではないという点にも注意してください。
は、企業(店)の費用の発生を表す取引と、事業主による資本の引出を表す取引の区別にかかわる仕訳問題です。事業主個人の家計が負担すべき金額は、企業の費用ではなく、資本の引出として記帳します。なお、事業主の所得税も、企業が負担すべき費用ではなく、資本の引出として記帳される点に注意してください。


[第2問]
 本問は、当座預金に関する勘定記入について、日々の勘定残高を把握した上で、当座預金勘定と当座借越勘定を用いて適切に処理できるかを問う問題です。当座預金勘定の増減にあたり、当座預金出納帳の状態を意識して処理を行えば、容易に解答することができます。勘定口座の中でも、標準式のみでなく、残高式による記帳も学習していると思いますので、その様な情報を活用できるようにしてください。
 また、日々の残高の状況、借越限度額、現在の借入および返済の状況は、処理を行ううえで当然把握すべき内容です。機械的に問題を解くだけでなく、経営活動の中でも活かすことができる学習を心掛けることが大切です。
 なお、多くの方は良く出来ていたようです。


[第3問]
 本問は、期中の取引を集計した結果としての残高試算表を作成する問題です。解答のプロセスは、各取引を仕訳し、それを各勘定へ転記するもので、簿記の基本的な手続きを理解しているかを問う問題です。この点では、簿記の基本である仕訳と転記に関する問題であり、量的に多いという点はあるものの、慌てることなく冷静に対応すれば格別難しい問題ではないと思われます。
 解答にさいしての要点は、問題に示されている各勘定に記入された取引の内容を正確に理解し、これを仕訳としてきちんと示すことができるかという点にあります。この問題では、例えば、現金勘定の記入のうち、借方記入の内訳については、借方を「現金」として、内訳に示された科目を相手勘定として仕訳を行なえばよいのです。
 ただ、現金勘定における借方記入の諸口として示された取引と、当座預金勘定における貸方記入の諸口として示された取引については、解答欄に示された数字をヒントとして仕訳を行う必要があり、この点については若干の応用力を問うこととなります。現金勘定借方の諸口に関する取引は、現金の増加が\190,000であるが、この取引に関しては有価証券売却益を含むものであり、この金額が残高試算表上に¥14,000と記入されているので、その差額が売買目的有価証券の減少額となります。同様に、当座預金勘定の貸方の諸口の取引は、当座預金の減少の\51,000は期首の残高試算表上に示された\5,000と期末の残高試算表上に示された\6,000との差額\1,000を含むものであるという点が理解できれば、借入金の減少額も判明するでしょう。


[第4問]
 本問は、決算整理事項のなかで売上原価の算定と、損益勘定への振替を出題しました。ただし、売上原価は仕入勘定において求めるのではなく、決算時において売上原価勘定を新たに設定して求めなければならない点で新規の出題形式でありました。
 見慣れない形式であったとはいえ、簿記の一般的なテキストでは売上原価勘定で売上原価を算定する方法も言及されているはずです。そもそも売上原価とは、売上げた商品の原価、すなわち期首商品棚卸高に当期商品仕入高を加え、期末商品棚卸高を控除すれば求められるものですので、日ごろから本質的な理解をもとに基本に忠実に学習していれば、@からBの手順に素直に従うことにより確実に正解できたはずです。本質的理解から目をそむけ、仕訳の意味内容を全く考えようとしないまま、仕入勘定で売上原価を求めるための、決算整理仕訳における勘定科目の最初の一文字を呪文のごとくただ繰り返しているだけでは、応用がきかないのも当然といえます。過去の出題パターンに習熟するだけでは真の実力が養われず、実務についた後に複雑な取引を会計処理することができないことと、日ごろから仕訳や勘定記入の意味を考えながら問題を解く癖を身につけていただきたいことを、簿記を学習される方、さらには簿記の指導にあたられる方に申しあげたいと存じます。
 また、Cでは算定された売上原価(費用)を損益勘定に振り替えるための仕訳も出題しました。損益振替仕訳を苦手にしている受験生も多いようですが、これも「簿記一巡」を構成する重要な複式簿記の手続きの一つでありますので、基本段階でしっかり修得しておくべきであります。
 誠に遺憾ではありますが、本問の得点状況は良好といえるものではありませんでした。あまり配点は高くないために合否には直接響かないかもしれませんが、残念ながら合格できなかった方はもとより、合格された方も含めてもう一度本問を振り返っていただきたいと願っております。


[第5問]
 本問は、未記帳事項について処理したうえで、精算表で与えられた金額から、8桁精算表を作成する過程をたどりながら空欄の金額を推定していく問題です。そのため、精算表を完成するために必要な過程全体がきちんと理解されているかどうかを問う問題となっています。
 本問を解答していくためには、まず未記帳事項をすべて適切に処理して整理記入欄にその結果を反映させていきます。この未記帳事項の処理が終了した時点で、精算表を完成するために必要な金額のすべてが精算表上で与えられます。そこで次に、決算整理で用いられる勘定科目欄の勘定科目を参考に、試算表欄、損益計算書欄および貸借対照表欄に基づいて、整理記入欄を完成させていきます。整理記入欄に必要な記入がすべて行われているかどうかは、整理記入欄の借方と貸方の金額を合計し、その金額が与えられた合計額と一致しているかどうかを確認することで確かめることができます。整理記入欄が完成できれば、あとは試算表欄の金額と整理記入欄の金額から損益計算書欄と貸借対照表欄の空欄を完成し、逆に損益計算書欄または貸借対照表欄と整理記入欄の金額から試算表の空欄を埋めていきます。
 このような問題を解答するためには、やみくもに空欄を推定していくのではなく、まず問題の全体を見渡して、問題の構造を分析し、解答の手順を確認してから、解き始めていくことが重要です。