[第1問] 期中における基本的な取引を示して、これらの取引を適切な勘定科目を用いて仕訳することができるかどうかを問う標準的な設問です。いずれも基礎的な内容であり、取引を記した文章をじっくりと読み、取引要素の結合関係を念頭に置きながら、資産・負債・資本の増減や費用・収益の発生を的確に捉えることができれば、容易に解答できる問題です。しかし、個々の取引の処理に対する理解が不足しているためか、資産を取得した際の付随費用を取得原価に含めずに処理したり、不注意から、勘定科目欄にない勘定を用いて処理し、失点する答案が見られました。
[第2問] 本問は、買掛金元帳(仕入先元帳)および商品有高帳に関連する問題でした。ただ、本問は補助元帳の記帳そのものを問うているのではなく、商品売買に関する取引を示したうえで、仕入先ごとの債務額や、純仕入高、および一部商品の売上原価の金額を求めさせる問題でした。過去にこのような形式の出題はこれまでありませんでしたが、今まで解いたことのない出題パターンにも冷静に対応できるだけの本質的な簿記の実力があるのか試すために出題しました。 解答にあたっては、まず最初に「問題文」だけではなく「問い」にも目を通すことによって、何が問われているのか確認してください。その上で余白などに5月中の取引の仕訳を行うのが得策でしょう。 1.は、武田商店および山梨商店に対する買掛金の残高を求める問題です。買掛金元帳ですので、手形上の債務は含まれませんし、長野商店の取引もありますので、注意が必要です。2.は、当期の純仕入高を求める問題ですが、総仕入高から値引・返品高を控除する必要があります。3.は商品B の売上原価を求める問題ですが、先入先出法がどのようなものかを理解していれば、正解にたどり着けるはずですが、単価を求めてしまったりして誤答がたいへん多かったです。たとえはじめての見慣れない形式の問題であったとしても、今まで蓄積した知識やスキルを総動員して冷静に対処する能力は、実務に就いた後においてもきわめて重要です。 本問の配点は8点であるため、合否への直接的な影響は軽微かもしれません。時間が足りなかったのか、わからなかったのか、空白の答案が目立ちました。しかしながら、上述しましたように過去の出題パターンだけに習熟しても、真の意味での簿記の実力がついているとは限りません。残念ながら不合格だった方だけでなく、合格された方もこの問題をもう一度振り返ってこの問題を解き直してみてください。 [第3問] 本問は、資料として与えられた「前月末の残高試算表」および「当月中に生じた取引」に基づいて、答案用紙の「当月末の残高試算表」を作成することを求めた問題であり、残高試算表の作成能力とそのための基礎となる取引の処理能力を試した問題であるということができます。 解答にあたっては、資料(B)に基づいて5月中の取引にかかわる仕訳を正しく行うことがまず必要になります。取引の仕訳には特に難しいものはありませんが、手付金の受取や支払いなどに注意しながら、取引の仕訳を正確かつ迅速に行うことが大切になります。また、取引の仕訳を行うにあたっては、答案用紙に与えられた残高試算表の勘定科目に注目し、それらに関連づけながら取引の仕訳を考えることが重要です。 取引の仕訳を行った後は、それを勘定科目ごとに集計し、前月末の残高の金額に加減して当月末の残高の金額を計算することになります。集計にあたっては、集計漏れや二重計算、借方金額と貸方金額の取り違え、計算ミスなどに注意してください。また、前月末の残高金額を加えることも忘れないでください。 取引を仕訳し、それを集計して試算表を作成することは、簿記の基本を身につけるうえで重要なことであり、その作業を正確かつ迅速に行うことができるようになるまで、日々の学習の中で練習を繰り返し行うように心掛けてください。 [第4問] 本問は、取引を誤って仕訳した際に、これを訂正するための仕訳を問う問題です。誤った仕訳を訂正するには、過去に行った仕訳の誤りを取り消し、改めて適切な仕訳を行う必要があります。問題文には、「訂正にあたっては取引記録の誤りのみを部分的に修正する」という指示があるので注意が必要です。 1.については、処理済の仕訳の貸方が貸倒引当金になっていますが、正しくは償却債権取立益ですので、その点を修正します。なお、前期以前に発生した売上債権で貸倒引当金が設定されている場合に、引当金設定額の範囲で当期に貸倒れが発生し、それを期中に回収した場合には、問題文のような仕訳となります。 2.については、減価償却にあたり記帳方法は間接法によることから、売却時には建物に対する減価償却累計額もあわせて消去する必要があります。処理済の仕訳には、その記載が不足しているため、過去に償却済みの8年分について減価償却累計額を計算し、記載があるはずの借方に記入するとともに、誤って計上されている固定資産売却損を修正するため貸方に記入することが求められます。訂正にあたっては、問題に与えられている勘定科目を使用しないと、処理済の仕訳の訂正につながらないため、注意してください。 [第5問] 本問は、決算に先立ち行われる「期中取引の追加修正的な事項」と「決算整理事項」がやや多い印象を受けるものの、精算表の問題としては、標準的な内容とレベルの問題です。解答にあたっては、それら決算整理事項等の仕訳を、一つずつ丹念に行えば、解答は得られます。 ただ、注意を要する点と応用力を求められる点としては、とくに次の3点に気をつけましょう。@貸倒引当金の計上額、減価償却費の計上額が、期中取引の追加的修正により残高試算表の金額に変動が生じ、この分の考慮が必要であること、A残高試算表の保険料の額は4月1日から5月末までの2ヶ月間の前払分を含んだ14ヶ月分であり、この点を考慮して、当期の保険料と前払分の計算を行うこと、B現金過不足にかかわる「適切な処理」というのは、現金過不足のうち期末に至るも原因不明の分は、雑損もしくは雑益として処理されるということ。 これらの点に十分注意し、決算整理事項等として示された取引についてきちんと仕訳を行えばよいのです。ただ、平均点は思ったほど伸びていないようです。本問はむしろ得点しやすい問題であると思われますので、イージーミスを少なくし、可能な限り高得点を得ることが合格には必要でしょう。 |