出題の意図<3級>


[第1問]
 本問は簿記上の取引についての基礎的な理解と勘定科目の内容についての基礎的な理解を問う問題です。
1.」は現金過不足が生じ、最終的に原因が判明しなかった場合の処理を問う問題です。現金過不足額の原因不明分については雑損失あるいは雑益もしくは雑収入として処理されるということを理解していることが大事です。
2.」は誤って行われた仕訳の修正を問う問題です。誤った仕訳を訂正するには、誤って行われた仕訳の反対仕訳を行い、誤って行われた仕訳を消去し、改めて正しい仕訳を行うという手順を理解していることが大事です。
3.」の解答にさいしては、手付金は前受金という勘定で処理されていることを理解していることが重要です。
4.」は備品を売却処分した場合の仕訳と固定資産売却損益の算出を問う問題です。備品を売却処分したさいには、売却価額と備品の正味の帳簿残高(取得原価−減価償却累計額)の差額を比較し、固定資産売却益あるいは固定資産売却損が計上されます。
5.」概算額の支払は仮払金勘定が用いられることについての理解を問う問題です。簿記上、未確定の金額の支払あるいは正確な勘定科目が不明な場合には仮払金勘定が用いられます。本問の場合、旅費の最終的な金額が未確定ですので、仮払金勘定が用いられます。

[第2問]

 本問は、手形記入帳と取引の関係を問う問題です。手形債権と手形債務の発生・消滅についての明細を記録する補助簿としては、受取手形記入帳と支払手形記入帳が用いられます。取引代金等の支払または回収に際して用いられる手形については、取引の状況を補助簿の記録と合わせて理解できることが大切です。なお、受取手形記入帳には、債務者(支払人)の記録があり、支払手形記入帳には、債権者(受取人)の記録があることから、問1は受取手形記入帳であることがわかります。
 手形の受け取りにあたっては、当店振出の約束手形を裏書譲渡により受け取った場合(手形債務の消滅)でない限り、約束手形・為替手形の種類に関係なく手形債権が発生するため、受取手形記入帳に記録されます。また、満期入金・割引・裏書譲渡が行われた場合は、手形債権の消滅となりますので、受取手形記入帳のてん末欄に記録されます。
 問2については、「次の帳簿記入にもとづいて」という問題文に従い、1月5日に売掛金回収として受け取った為替手形と、その手形が支払期日に取り立てられた処理を、また、1月9日に売上代金として受け取った約束手形と、その手形が支払期日前に裏書譲渡により消滅した処理を行うことが受取手形記入帳からわかります。ただし、2月9日は仕入取引と合わせた問題となっており、仕入代金と裏書譲渡した手形金額との差額により代金の不足額を求める必要があります。基本的な出題であり、受験者全体としてはよくできていたようです。

[第3問]
 本問は、月初の残高試算表および1か月間に生じた取引にかかわる資料に基づいて、月末の残高試算表を正しく作成することができるかどうかを問う問題であり、残高試算表の作成能力とそのための基礎となる取引の処理能力を試した問題です。
 解答にあたっては、まず取引の仕訳を正しく行うことが必要になりますが、取引の仕訳は答案用紙に与えられた残高試算表の勘定科目を用いて行われるという点に注意してください。残高試算表の勘定科目に関連づけながら取引の仕訳を考えることによって、仕訳の誤りを少なくできるだけでなく、解答作業を効率的に進めることができます。
 また、取引の仕訳にあたっては、商品の仕入に伴う引取費用、商品の売上に伴う発送費用、有価証券の購入に伴う購入手数料などの付随費用の処理、商品の返品や値引の仕訳、手付金の授受の仕訳などに特に注意してください。
 取引の仕訳を行った後は、それを勘定科目ごとに集計し、月初の残高の金額に加減して月末の残高の金額を計算することになりますが、集計にあたっては、集計漏れや二重計算、借方金額と貸方金額の取り違え、計算ミスなどに注意してください。また、月初の残高金額を加えることも忘れないようにしてください。
 取引を仕訳し、それを集計して試算表を作成することは、簿記の基本を身につける上で重要なことですが、その作業を正確かつ迅速に行うことができるようにするためには、何よりも日常的に練習を繰り返すことが大切だと思います。

[第4問]
 本問は、伝票会計からの出題です。今回は、5伝票制で起票された取引を3伝票制で起票する問題を出題しました。ここで、一部現金の収支を伴う一部振替取引の起票方法には、複数の方法がありますので、それぞれの方法で入金伝票と振替伝票に起票する問題としました。
 問題文で与えられた売上伝票と入金伝票の内容から、比較的容易に代金の一部を現金で受け取った商品売上の取引であると推測できるかと思います。その上で、(1)取引を現金売上と掛売上とに分解して処理する方法と、(2)いったん全額掛けによる売上取引として処理する方法に基づいて起票します。すなわち、(1)では現金売上の部分を入金伝票に、掛売上の部分を振替伝票に起票すれば良いですし、(2)では全額掛取引の部分を振替伝票に、そして掛代金の回収の部分を入金伝票に起票すれば良かったのですが、満点の答案も数多く見られた反面、残念ながらあまり得点が伸びてない答案が目立っていました。
 本問は配点が少ないため、合否には大きく影響しないかもしれませんが、伝票は取引の証拠となる重要な書類ですから、経理に携わる方だけでなくすべてのビジネスパーソンにとって、伝票会計の知識は業務上必要となるものです。合否にかかわりなく、もう一度一部振替取引の処理方法を復習しておいてください。

[第5問]
 本問は、(1)決算までに判明した未記帳事項、および、(2)期末整理事項にもとづく修正記入欄の記入、試算表と修正記入欄の記録に基づく損益計算書欄および貸借対照表欄の完成といった8桁精算表の作成について基本的な理解を問う設問です。
 精算表を完成させる上でポイントとなったのは、未記帳事項における約束手形の割引処理を貸倒引当金の設定に適切に反映させることができるか、期中に購入した備品の処理を的確に行った上で減価償却費の計算に反映できているか、店主の私用による商品の消費を売上原価の計算に適切に反映できるか、収益と費用の繰延と見越が正確に行われているか、などといった点です。
 今回の問題では、試算表の作成段階で当座預金が借越となっているため、当座預金勘定が勘定科目欄に表示されていません。そのため未記帳事項の手形の割引処理を行った段階で当座預金勘定が示されていないことに戸惑ったと思われる答案も散見されました。予め勘定科目欄を確認することで、( )内に当座預金勘定を記入すれば容易に解答できるようになっていることがわかります。解答を始める前に設問全体を概観しておくよう心がけておけば、戸惑うことも少なくなるでしょう。また、3級の答案で毎回目立つのは、不注意による桁の間違い、誤字・脱字、不正確な勘定科目の記入や金額を書き移す欄の間違いによって失点する答案です。このようなミスを防ぐためには、学習の時からこのようなケアレス・ミスを意識しながら解答をするよう心がけておく必要があります。