出題の意図<3級>


[第1問]
 期中における基本的な取引を示して、簿記の5つの要素に的確に分類して、資産・負債・資本の増減と、収益・費用の発生または取り消しについて、適切な勘定科目を用いて仕訳によって示すことができるかどうかを問う標準的な設問です。基礎的な理解力を問う設問であったため、比較的正答率は高かったようですが、設問の内容を把握できずに失点している答案が散見されました。
1.商品券と他店商品券の決済時の処理を問う設問です。商品券を発行したときは商品券勘定の貸方に記入して債務を記録し、他店商品券で販売したときは他店商品券勘定の借方に記入して債権を記録しておきます。決済時には、これらの債権・債務が消滅するので、商品券勘定の借方に記入するとともに、他店商品券勘定の貸方に記入します。この場合の貸借差額が現金での決済額となります。
2.建物の火災保険料のうち、保険料勘定で処理できるのは店舗に対応する部分の70%だけで、残りの30%と生命保険料については資本の引出として処理します。ただし、引出金勘定は勘定科目の選択肢に含まれていないため、資本金勘定を用いて資本の減少を記録します。
3.掛で販売した商品の値引と返品の処理を問う設問です。いずれも売上取引の取り消しとしなければならないため、売上勘定の借方に記入して売上取引を取り消すとともに、売掛金勘定の貸方に記入して売上債権を減少させる必要があります。
4.給料の支給にあたって、従業員に対する貸付金とその利息を差し引いた上で、支給する場合の処理を問う設問です。従業員に対して貸付を行った際には従業員貸付金勘定の借方に記入して債権を記録しているため、返済時には従業員貸付金勘定の貸方に記入して債権を消滅させます。この貸付金に対する利息相当額については収益の発生として受取利息勘定の貸方に記入します。給料勘定の借方に記入する給料総額と、従業員貸付金勘定、および、受取利息勘定の貸方に記入した金額の合計額との差額が当座預金からの振込額となります。
5.商品を仕入れ、その代金の一部として手持ちの為替手形を裏書譲渡しているため、受取手形勘定の貸方に記入して手形債権を減少させます。残額について小切手を振り出していますので、当座預金を減少させますが、当座預金の残高が¥80,000となっているため、それを超過する¥60,000については当座借越勘定で処理します。当座勘定は、勘定科目の選択肢に含まれていない点に注意する必要があります。


[第2問]
 第2問は、小口現金出納帳への記帳(週末の締め切りを含む)を出題しました。小口現金出納帳の出題は、平成12年度の第95回の検定試験以来でしたので、戸惑われた受験者もいたかもしれませんが、問題文の指示に基づいて落ち着いて記帳していけば、スムーズに解答できたでしょう。
 小口現金出納帳は、用度係が小口現金の補給と支払いの明細を記録するために作成する補助簿です。したがって、単に問題が解けさえすれば良いのではなく、そもそも何のために存在する帳簿なのか、何を記帳しなければならないのか、あるいは記帳された金額は何を意味するのかを常日ごろから考えながら解くように心がけてください。
 まず、11月1日時点での前週からの繰越額¥50,000を受入欄に記入します。受入欄に全く記入されていない答案が散見されました。次に、資料から支払いに関する記帳を順次行いますが、本問ではすでに日付欄と摘要欄が埋められていますので、支払欄と内訳欄のみを記帳します。消耗品費は文房具など事務で使用する物品の代金で、この他に通信費あるいは交通費に分類できない支出は雑費となります。支払欄は比較的よくできていましたが、内訳欄で切手・はがき代を消耗品費としたり、新聞購読代を通信費としている答案が見受けられました。
 1週間の支払額を、支払欄を合計して計算しますが、これは内訳欄における個々の費用の合計額と一致しますので、必ず検算してください。その上で、本問は週末補給の場合ですので、支払額と同額の小切手を受け取って受入欄に記帳します。なお、場合によっては週明けに補給が行われることもあります。受入総額から支払総額を差し引いて次週繰越の金額を算出しますが、本問では常に¥50,000になります。最後に、受入欄および支払欄の合計額を合わせて締め切ります。この締め切りができていない答案が非常に多かったです。採点箇所の関係上、点数が高かった方でも正しく締め切っている答案は少数でした。
 なお、11月8日の前週繰越の記帳も忘れないで行ってください。

[第3問]
 本問は、月初の合計残高試算表に月中の取引を加え、月末の残高試算表を作成するという問題です。本問は仕訳と転記が適切に行われていれば自動的に解答できるものであり、何ら難しい点のない、簿記3級の内容の基礎的な理解を問う極めてオーソドックスな問題でした。
 それゆえ、月中の取引の意味をきちんと理解し、それらをきちんと仕訳することができ、その結果を正確に転記できれば解答はおのずと出来あがります。ただ、取引例が多いかもしれませんので、慌てずに落ち着いて正確に取引の処理をしてゆけばよいでしょう。多量の取引を所定の時間内に正確に処理をするということも、経理担当者としては欠かせない能力であることも理解をしてください。これら取引のうち、あえて注意をする必要があるとするならば、月中の16.および21.の取引でしょう。解答にさいして注意をしなければならない点は、月初の試算表は「合計試算表」ですが、解答として作成を求められている試算表は「残高試算表」であるという点です。
 また、月初の試算表上にあった勘定科目で月末の試算表上では消滅している科目や、逆に、月初の試算表上にない科目で月末の試算表上に現れる科目もあるので、これらについても十分に注意を払う必要があります。

[第4問]
 本問は、三伝票制に基づいた伝票会計の基礎的な理解を問う問題です。
 伝票会計として、3級では、三伝票制および五伝票制に基づいて、取引がどの様にして起票に結びついていくかを問います。しかし、単に伝票の記入法を知るだけではなく、取引の性質や起票のタイミング、また補助元帳など帳簿との関連を知ることも基本の学習としては重要です。さらに、伝票会計では、一部振替取引においての起票の方法は2つあることに注意してください。
 内容として、本問では各取引における振替伝票の起票を求めています。起票にあたっては、取引のうち現金の入出金を伴う部分は「入金伝票」、「出金伝票」とし、そうでない部分を振替伝票とします。(1)では、取引の一部がすでに入金伝票に起票済みであり、科目名の指定から考えて取引を分解して起票する方法と分かります。また、(2)では全額が振替取引となりますので、仕訳を正確に行うことで振替伝票への起票ができます。両問とも、基礎学習の段階で必ず理解していなければならない程度の問題ですので、受験者としては確実に正解することが求められます。
 なお、問題文において特に指示をしておりませんが、(1)入金時の科目名に「売上」の指示がありますので、商品売買は三分法による記帳法となり、(2)では「仕入」を使用します。試験問題にあたる上では、問題の状況から考え、より適切な方法で処理することが求められますので注意してください。

[第5問]
 本問は、決算整理前の残高試算表および決算整理事項その他の修正事項にかかわる資料に基づいて、8桁精算表を正しく完成させることができるかどうかを問うた問題であり、標準的な精算表作成問題であるということができます。
 解答に当たっては、次の点がポイントとなります。
@答案用紙に与えられた精算表の残高試算表欄の金額は、決算整理前の残高試算表の金額を表すものであることをきちんと理解していること。
A問題文で与えられた[決算整理事項その他]の資料に基づいて、決算整理等の修正仕訳を精算表の勘定科目欄と修正記入欄に正しく記入することができること。特に、[決算整理事項その他]の2および3の修正仕訳は、4における貸倒れの見積対象である受取手形と売掛金の期末残高に影響を及ぼすものである点に注意してください。
B残高試算表欄の金額および修正記入欄に記入した金額に基づいて、損益計算書欄および貸借対照表欄への集計・記入、当期純利益の計算と記入、合計欄の記入と締切を行ない、精算表を正しく完成させることができること。特に、未収地代や前払保険料のようないわゆる経過勘定は、損益計算書欄ではなく、貸借対照表欄に集計・記入すべき項目である点に注意してください。
 精算表とその作成に関する知識は、簿記の学習、とりわけ決算の意味と構造を理解するうえでとても大切なものですので、基本的な事項についてしっかりと学ぶことが重要であるといえます。