[第1問] 本問のうち、2.から5.は、日常の取引においてしばしば生じる商品売買における売掛金、買掛金以外の債権および債務に関わる取引の理解を問う問題です。解答に際しては、これらの債権と債務の内容と相互の対応関係について、正確に理解していることが必要です。 相互の対応関係とは、@未収金と未払金、A前払金と前受金、B立替金と預り金、C仮払金と仮受金といった関係です。@は商品売買以外の取引によって生じた債権、債務を処理する際に用いられる勘定科目です。Aは商品売買に先立って手付額が授受された場合に生じる債権と債務を処理するために用いられる勘定科目で、これらの金額は、基本的には商品売買が成立した際に商品売買代金と相殺されます。Bはその名が示すとおりの内容の取引を処理するために用いられる勘定科目です。Cは現金などが授受されたけれども、その内容が不明の項目を一時的に処理しておくための勘定科目です。 これらの勘定科目は、決算に際しては、内容が確定した、しかるべき科目へ振り替えられるので、貸借対照表上に現れることはありません。 1.は備品の売却処分に関わる問題です。注意すべき点は、減価償却が直接法で処理されている場合の解答を求めていることです。したがって、減価償却累計額は仕訳上生じません。間接法で解答している答案が意外に多かったので、受験に際しては、問題文の指示を注意深く読むことを心がけてほしいものです。また、小切手を受け取った場合には、現金として処理することも見落としがちなので、注意が必要です。 第1問は、完全にできている人がかなり多かった反面、まったくできていない人も多かったようです。勘定科目の内容など、基礎的な事項をきちんと理解している人にとっては難しい問題ではないと思われます。 [第2問] 本問は、支払家賃に関わる期首から期末にかけての取引を、正確に勘定の上で記録することができるかどうかの理解を問う問題です。簡単に言えば、期首の再振替仕訳、期末の決算修正仕訳、決算仕訳が勘定の上できちんと行えるかどうかを問うています。 本問の解答に際しては、勘定の上の日付から、期首には前期から繰り越されてきた未払家賃があり、期末には前払家賃があることをきちんと理解することが必要です。期首にある未払家賃は、再振替仕訳により、その残高が支払家賃勘定へ振り替えられます。期末には、決算修正仕訳により、家賃の前払分が当期の支払家賃から控除されることになり、支払家賃から前払分を控除した残額は、決算仕訳により当期の家賃として損益勘定へ振り替えられます。前払家賃の計上は、精算表の問題でしばしば決算修正事項として出題されますが、仕訳としてばかりではなく、再振替仕訳、決算修正仕訳を含めてこれを帳簿決算として勘定の上でもきちんと記録することができるようしておくことが必要です。そのためには、これらの仕訳の意味や内容と決算の手順を正確に理解してください。全体的に見て、この問題のでき具合は相当に悪かったようですので、できなかった人は、もう一度、帳簿決算の手順をきちんと学習してほしいと思います。 [第3問] 本問では、期中の合計試算表をスタートとして、これに諸取引の仕訳を行い、決算整理前の合計残高試算表を作成し、併せて売掛金・買掛金の明細表を作成する問題を出題しました。過去においても類似の問題を出題していますので、解き方で悩むような問題ではなかったと思います。 この種の問題では、売掛金・買掛金、受取手形・支払手形といった、日常業務において重要な債権債務に係る記帳処理を正確に行うことができたかどうかが重要なポイントです。為替手形の振り出し、手形の裏書譲渡などの複雑な債権債務取引について、正確に理解しているかどうかが問われています。売掛金・買掛金の明細表の作成に当たっては、人名勘定を作成して集計作業を行うなどの工夫が必要です。なお、店主個人が負担する電気代は、資本の引き出しとして処理しなければなりません。 [第4問] 本問は、振替伝票と入金伝票あるいは出金伝票の両方に記入が行われる複合的な取引に関わる伝票記入の理解を問うものです。伝票仕訳のポイントは、もとの取引の仕訳が正確に行われていることですので、問題として示された仕訳がきちんと行われていれば、本問の解答はまったく難しいものではないと思います。その仕訳にもとづいて、入金伝票には借方現金となる取引を、出金伝票には貸方現金となる取引を記入することになります。すなわち、現金の入金があればその部分は入金伝票に、出金があればその部分は出金伝票に記入すればよく、振替伝票には、現金部分を除いた残りの金額で仕訳を行えば、解答は難なく得られます。ただ、入金伝票と出金伝票の記入に際しては、相手勘定の記入を間違えないことが大切です。全体的には本問の正答率は高く、この内容に関する理解はきちんと行われているようでした。 なお、今回の問題では、勘定科目の欄の記入は、問題文に示した勘定科目群の中から適切な勘定を選び、その「番号を記入する」ように指示しています。解答には勘定科目をそのまま記入しているものが多く見られました。問題文をきちんと読み、指示に従って解答するということは極めて大事なことです。問題文をよく読まないで解答し、点数を失うといったケアレスミスがないように心がけることは、受験に際しては極めて大事なことです。 [第5問] 本問は、期末整理事項等に基づく修正記入欄の記入、試算表と修正記入欄の記録に基づく損益計算書欄および貸借対照表欄の完成といった8桁精算表の作成について基本的な理解を問う設問です。 精算表を完成させる上でポイントとなったのは、期末整理事項等において売掛金の回収・貸倒の処理を貸倒引当金の設定に適切に反映させることができるか、期末に売却した備品の処理が的確に行われ、減価償却費の計算に反映できているか、収益と費用の繰延と見越が正確に行われているか、などといった点です。 今回は特に、備品売却の処理および通信費の未経過分の繰延処理において、取引内容を十分把握していないために、失点する答案が目立ちました。当たり前のことですが、取引内容を十分理解した上で、解答する必要があります。 また、3級の答案で目立つのは、不注意による桁の間違いや、勘定科目の誤字・脱字によって失点する答案です。このようなミスを防ぐためには、金額については3桁ごとにカンマで区切る習慣や、用いられる勘定科目名を正確に理解し、省略せずに丁寧に記入する習慣を普段から身につけておく必要があります。 |